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親族による高齢者の「囲い込み」問題

2017年9月4日 成年後見

昨今の高齢化の進展により、日本社会の様々な問題点が浮き彫りになっています。そのうちの一つといえるのが、親族による高齢者の「囲い込み」問題です。

 

「囲い込み」問題とは

自分の両親を介護するといった理由で高齢者と同居している方も数多くいると思います。ただ、そのような同居者の中には、別居している親族を完全に排斥し、判断能力が低下した高齢者の財産を思うままに処分・消費してしまう人もいます。

たとえば、認知症の症状が出始めた高齢者の通帳類の管理をし始めた同居の子が、高齢者が受け取るはずだった年金や貯蓄を、ギャンブルや借金返済等、私的に使い込んでしまうといったような事例です。

このような事案は、親族ではない人が行えば、当然、犯罪に問われるべき行為です。しかし、同居の親族が行っているというだけで、途端に外部からは見えづらくなります。精神的・身体的な衰えにより、高齢者自身が直接外部に助けを求めることは困難です。加えて、同居親族に生じる重い介護責任や扶養責任、同居親族の貧困問題の存在も、この問題を複雑かつ深刻にします(日本経済新聞電子版「家族による「経済的虐待」が増加 高齢者の年金・預金搾取」(2010年6月14日)参照)。

「囲い込み」という言葉は、高齢者が親族に囲われることで行政や福祉など外部から隔離された結果、経済的虐待その他さまざまな形態の虐待を容易に受けてしまう、という現代社会の状況を問題化する言葉であると言えるでしょう。

 

民事上の請求

それでは、上記のような同居親族が高齢者の財産を使い込み、経済的に虐待しているような事案について、別居の親族がその存在に気付いた場合、どのような法的手段を講じることができるでしょうか。

まず民事上の対応としては、親族といえども、高齢者の貯蓄等から金員を支出し、自分の物を購入してしまったりすれば、民事的には無権代理行為(113条1項)や不法行為(709条)と評価される可能性があり、このような行為にあたるならば、高齢者から金銭を使い込んだ親族に対して不当利得返還請求(民法703条、704条)や損害賠償請求を行い、金銭を回収できる余地があります。

高齢者本人の判断能力に衰えがない場合、高齢者本人が弁護士に依頼して、このような請求を行うことが可能です。

 

成年後見制度の利用

これらの民事上の請求は、あくまでも高齢者本人が請求できる権利ですから、高齢者の法的な判断能力が無くなってしまっていると考えられる場合には、家庭裁判所に対して後見開始審判の申立を行い、成年後見人をつけるという手段が考えられます。

後見開始の審判は、高齢者本人以外でも一定の範囲の親族が申し立てることができます。選任された成年後見人には高齢者(成年被後見人)の財産を管理する権限がありますので、排他的になっている親族も話し合いに応じる可能性があがるといったメリットがあります。成年後見人として、法律の専門家である弁護士を選任してもらえれば、更に効果的といえるでしょう。

ただし、成年後見審判を得るためには、高齢者本人について判断能力を欠くとの診断や鑑定が行われることが前提になります。この診断や鑑定は、原則として本人を直接診察する必要がありますが、そもそもそのような協力を高齢者本人や同居親族から得られない場合、現在の法制度上、これを強制することは大変困難です。そのような場合、警察や行政との連携が視野に入ります。

 

刑事上の対応

刑事上の対応としては、まず、財産の使い込み行為自体を、窃盗罪や詐欺罪、横領罪(刑法235条、246条1項、252条)といった犯罪に該当するものとして、警察に告訴・告発を行うことが考えられます。

しかし、これらの犯罪には、一定の範囲の親族(配偶者、直系血族又は同居親族)が犯したとしても刑が免除されるという親族相盗例(刑法244条1項等)の規定があり、この方法は、虐待者がこの範囲の親族に該当しない事案に限られます。

親族相盗例に該当する場合には、保護責任者遺棄罪、逮捕・監禁罪、有印私文書偽造罪(刑法218条、220条、159条1項)など、親族相盗例が及ばない犯罪を構成しないか検討する必要があります。

これらの法的検討や告訴・告発について、弁護士がお手伝いすることが可能です。

 

行政機関との連携

行政には、高齢者虐待防止法上、高齢者虐待の通報を受けたときには、立入調査権限の行使を含め、必要な措置を講じる義務があります。高齢者虐待は様々な要因が複合して発生することが多く(東京都福祉保健局ホームページ参照),様々な切り口から解決方法を探る場合、行政からの助力を得ることが適切です。

広島県が公開している「経済的虐待に対する基本的理解」という事例集には、行政との連携により高齢者に対する経済的虐待を解決した事例が掲載されており、解決方法のヒントになります。

弁護士は、行政への通報や立ち合い、解決策の提案といった側面からのお手伝いが可能です。

 

最後に

以上、親族による高齢者の「囲い込み」問題に対する法的な対応方法を概観してきました。

「法は家庭に入らず」という伝統的な法諺(法のことわざ)が示すとおり、家庭内トラブルへの法の介入には一定のハードルがあります。しかし、高齢者虐待防止法が「高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要である」(1条)と規定したとおり、親族による高齢者の財産の使い込みは、高齢者への経済的虐待(同法2条4項2号)と評価されるべきものであって、高齢者の人権擁護の観点からは許されるものではありません。

囲い込みの問題をはじめ、親族間トラブルにお困りの際には、お気軽に弁護士法人アドバンスまでご相談いただければと思います。

 


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