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SNS上でのネット誹謗中傷と名誉毀損

2018年5月23日 刑事事件

今年に入って大変興味深いニュースが報じられました。横浜DeNAベイスターズに所属する井納選手が、インターネットの掲示板にて奥さんを中傷されたとして、その相手に約200万円の支払いを求める裁判を起こしたというものです。

FacebookやTwitter、インスタグラムといったSNSや、インターネットの掲示板などは、私たちにとって非常に身近なツールです。SNSは自分の意見を発信するには非常に便利ですが、同時に多くのトラブルを引き起こすことがあります。今回のコラムではSNSを利用するうえで特に注意しなければならない“ネット上の誹謗中傷”をテーマに解説します。

 

ネット上の誹謗中傷における「名誉毀損」と「侮辱」

SNSで人の誹謗中傷を発信した場合、法律上の「名誉毀損」や「侮辱」に該当するかが問題となります。もし該当した場合は刑罰を受けたり、民事上の損害賠償金を請求されることになります。

刑法において、「名誉毀損罪(230条)」は公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に、「侮辱罪(231条)」は事実を摘示せずに、公然と人を侮辱した場合に成立します。

両罪とも、人や法人などの社会的評価(外部的名誉)を傷つける行為であり、そして、その行為が公然と行われる必要があります。この“公然性”とは「不特定又は多数の人が認識しうる」状態をいいます。つまり、TwitterなどのSNSやインターネットの提示版は、基本的に誰でも閲覧が可能なので、原則としてこの要件を満たしています。ちなみにTwitterで「鍵垢(=許可された人しか見ることができない鍵付きのアカウント)」だったとしても、数十人単位のフォロワーがいれば少人数とはいえませんし、そのツイートを見た人から内容が漏れてしまう可能性を考慮すれば(伝播性)、多くの場合で公然性が認められます。
 
ここまでみると、名誉毀損罪と侮辱罪とは非常に似ている刑罰ですが、「事実を摘示」しているか否かで大きく異なります。名誉毀損罪は事実の摘示を成立の要件としています。摘示される事実とは人の社会的評価を低下させるような具体的な事実のことを指します。つまり「AはBと不倫している」といった具体的なもので、「Aの馬鹿野郎」といったものだけでは具体的な事実とはいえず、名誉毀損罪は成立しません(侮辱罪が成立する可能性があります)。

名誉毀損罪においては、摘示した事実が真実か否かは基本的に問題となりません。ただし、公共の利害に関する事実の場合に限り、名誉を毀損した方が真実性を証明すれば免責されます。真実性の証明には「事実の公共性」(公共の利害に関する事実)および「目的の公共性」(公益目的)の要件が必要となります。たとえば、相手が有名な政治家であって過去の政治に関するスキャンダルを公にする場合は、上記の要件をすべて満たすので名誉毀損罪が成立しません。仮にその政治スキャンダルが真実でなくても、真実と信じる相当な理由があったと裁判所が判断すれば同じく成立しません。しかし、名誉を傷つけた相手が一般人である場合、多くの場合でその事実が公共の利害に関する事実ではないので、真実であるか否かに関わらず名誉毀損罪が成立します。

 

ネット上で誹謗中傷の被害者になった場合

SNS上で誹謗中傷された場合、その相手に刑事責任と民事責任を追及することができます。刑事責任を追及したいときは、名誉毀損でも侮辱でも「告訴」しなければなりません(親告罪)。つまり捜査機関 (検察官・司法警察員) に犯罪事実を申告し、自らその訴追を求めなければなりません。

告訴すると、捜査機関が捜査を開始し、検察官は起訴されると刑事裁判(正式裁判または略式)となります(立証上の問題や事案の態様から起訴されない場合もあります)。裁判を経て刑が確定するのですが、名誉毀損罪は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」という比較的重い法定刑が定められている一方、侮辱罪は「拘留(1日以上30日未満刑事施設に拘置)又は科料(1,000円以上1万円未満の金額を支払う)」という一番軽い部類の刑罰が定められています。

しかし、たとえ相手に刑罰が適用されたとしても、相手が被害者へ慰謝料を支払うことはありません。慰謝料を請求するためには、刑事手続きの途中で慰謝料を求める示談交渉か、民事上で損害賠償請求をしなければなりません。
 
相手が名誉を毀損または侮辱したときに、それが過ぎたものであると認められれば、民法709条に定める「不法行為」となり、同710条に基づき、精神的な苦痛を被ったとして損害賠償請求(慰謝料の請求)をすることができます。どの程度の金額が認められるかは事案によって大きく異なりますが、公表されている裁判例では、数十万円から数百万円までの幅があります。基本的に、名誉毀損の場合は、侮辱よりも違法性が強いと考えられるので、慰謝料請求が認められやすいですし、その金額もより高くなることがほとんどです。

 

ネット上での誹謗中傷に関する弁護士へのご相談はアドバンスへ

たとえSNSにおいて匿名で他人を誹謗中傷したとしても、プロバイダ責任制限法にもとづいて発信者情報を特定され、最終的に投稿者を特定されて責任追及されてしまう恐れがあります。ちょっとした出来心で、SNSで他人の誹謗中傷を発信したために、刑罰を受けたり、多額の慰謝料を支払わなければならなくなるかもしれません。

SNSで誹謗中傷されて被害者に、または加害者になってしまった場合には、いち早く弁護士に相談することをおすすめします。被害者そして加害者にとっても、早い段階から適切な対応をすれば、その後の手続を有利に進めることができます。

弁護士法人アドバンスでは、これまでも数多くのネット誹謗中傷関連の事件を取り扱っており、被害者、加害者のどちらの方からでもご相談も承っております。どうぞ安心してご相談ください。


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